研究概要 |
生の組織標本を用いて,顕微測光画像解析システム(Hamamatsu Argus 50/CAおよびNikon RCM/Ab)にて,各種伝達物質や薬物が上皮組織の細胞に与える効果を検討した。 1) 小腸陰窩上皮細胞は,ATPに対してCa^<2+>応答をすることが確かめられ,これはP2Y受容体を介していた。遠位部回腸では、C^<2+>の上昇は絨毛境界部から生じたのに対し、近位十二指腸では陰窩中央部〜下端から起きた。(研究成果報告:1-1,1-3) 2) 十二指腸腺では,自動的な細胞内カルシウムの律動的変動が生じていた。その際,細胞内Ca^<2+>波は細胞の分泌果粒領域から生じて細胞の底部に向っていたが,底部から始まる場合もあった。(1-2,4-1) 3) 涙腺やハーダー腺では,アセチルコリン様の刺激で筋上皮細胞と腺細胞のCa^<2+>応答と収縮が引き起こされたが,涙腺ではノルアドレナリン刺激で腺細胞のみの反応が観察された。(3-1,3-3,4-1) 4) 前立腺組織では,腺細胞のCa^<2+>応答を引き起こす伝達物質を同定するに至らなかった。一方,間質の平滑筋はノルアドレナリンに対して反応した。(3-2,4-1) 5) ATPにより,精細管上皮に持続性のCa^<2+>応答が見られた。 6) 角膜上皮組織では,ATPにより細胞内カルシウム貯蔵場からの放出による急激なCa^<2+>の上昇と,それに引続く細胞外からのCa^<2+>の流入が引き起こされた。これはP2Y受容体を介していた。中間層の細胞では各細胞が同期して律動的変動を示していた。(2-1,2-2) 7) 血管の形を維持したままの標本で,血管平滑筋の収縮と細胞内カルシウム濃度の上昇を確かめた。ノルアドレナリンでは局所性の、セロトニンやATP、エンドセリンでは血管全周の反応が引き起こされる事が確かめられた。(4-1)
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