研究概要 |
シナプス伝達はエクソサイトーシスによって分泌される神経伝達物質の作用であり、本年度はシナプス前終末への実験操作が可能なラット台形体内側核に形成される杯様シナプスの生後発達過程を研究することで、エクソサイトーシスに関わる細胞内Ca動態を明らかにすることを試みた。生後4日令(P4)から13日令(P13)の範囲で、シナプス電流を解析すると、日令の若い細胞ではシナプス電流の大きさおよび電気刺激後の発生タイミングが大きく揺らいだ。一方9日令を過ぎた細胞では揺らぎは小さく、非常に均一な大きさおよび時間経過を示すシナプス後電流が記録できた。この間、EPSCの大きさはおよそ5倍になり、分散係数(CV)で評価した電流値の揺らぎは6分の1に減少した。さらに自発的に発生するP4のmEEPSCは進んだ日令(P9)のEPSCと同一の時間経過を示す。シナプス伝達の要素過程が既にP4で完成していることを示唆する。日令が進むにしたがい強力になるシナプス伝達はその多くがシナプス前終末におけるCa^<2+>電流の増加に起因するものと考える。CdあるいはCaチャネル毒素によってシナプス前終末のCaチャネルを部分的に阻害し、シナプス電流量を対照の20-30%に減少させた状態では,Caイオンに対する感受性が減少し、シナプス伝達に非同期的な放出が増大した。したがって、本年度の研究対象とした位相応答特性を持つシナプス伝達の生後発達はシナプス前終末でのCaチャネルとシナプス小胞間の相互作用が増大すること、おそらくシナプス小胞とCaチャネルがより近接して存在するようになる事によって完成すると考える。
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