研究概要 |
本年度は,マイクロダイアリシス法をラット心臓に適用し,アデノシン産生酵素である5'-ヌクレオチターゼ活性をin vivoで評価することを試みた.ラットを麻酔人工呼吸下に開胸し,マイクロダイアリシス用プローブを左心室筋層内に装着した.タイロード液をプローブを介して毎分1μlで灌流し,採取した透析液中のアデノシン濃度を測定した.アデノシン濃度は,本研究を遂行するにあたり購入した高速液体クロマトグラフ法による分析装置一式を用いて測定した.タイロード液灌流下の定常状態におけるアデノシン濃度は0.51【plus-minus】0.09μM(n=16)であった.5'-ヌクレオチダーゼ活性は一定量のAMP(5'-ヌクレオチダーゼの基質)供給下に産生されるアデノシン量で表される.そこで,タイロード液に各種濃度(10μM-1mM)のAMPを添加するとアデノシンは濃度依存性に増加し,そのED_<50>は107.2μMであった.この値はラット心筋を用いたin vitro実験で報告されているエクト-5'-ヌクレオチダーゼのK_m値と近似している.また,5'-ヌクレオチダーゼ阻害剤であるα,β-methyleneadenosine 5'-diphosphate (0.01μM^〜1μM)はAMP(100μM)灌流下のアデノシンを濃度依存性に抑制し,そのIC_<50>は0.41μMであった.これらの結果より,AMP灌流により増加したアデノシンは,AMPが5'-ヌクレオチダーゼにより加水分解されて生じたものであり,ラット心室筋の5'-ヌクレオチダーゼ活性を反映していると考えられる.そこでAMP(100μM)灌流下に膜透過性のジアシルグリセロース(1,2-dioctanoyl-sn-glycerol)を灌流したところアデノシン濃度が増加した.すなわちprotein kinaseCにより,5'-ヌクレオチダーゼが活性化することが示唆された.
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