| 研究概要 |
ジェット航空機によるパラボリックフライト時には,放物線軌跡の頂点で約20秒間の微小重力が得られ,その前後で1.5〜2.0Gの過重力状態(約15秒間)が出現する.ヒトの脛骨神経から微小神経電図法によりニューログラムとして記録しうる筋交感神経活動は,重力に依存する体液分布と血流配分を制御することにより循環動態の恒常性を維持するが,その活動は頭から足に向かう重力成分(+Gz)に依存し,微小重力下において抑制され,+Gzの負荷により促通されると推定されている.本研究ではヒトの筋交感神経活動がパラボリックフライトによる重力変化時にどのように変化するかを解析した.名古屋空港に隣接するダイアモンドエアサア-ビス社所属のMU-300を用いて,熊野灘・遠州灘上空あるいは能登半島沖の日本海上空において,パラボリックフライトを1人につき最大10回,計2人に対し行った.下腿三頭筋支配の筋交感神経活動を脛骨神経から記録し,同時に心電図,呼吸,血圧波,胸腔内血液量を測定した.その結果,筋交感神経活動は過重力時に賦活化され,微小重力時に抑制されることが明らかとなったが,その賦活化,抑制は一過性で,体液移動により惹起される血圧変化に依存した.過重力・微小重力区間全体においては,筋交感神経活動の賦活化・抑制はそれぞれ177%・52%であったが,微小重力区間の後半においては血圧低下とともに筋交感神経活動の賦活化が生じた.この賦活化は血液低下との間に相関を示し,動脈圧受容器反射によるものと推測された.この血液低下と,これに伴う筋交感神経活動の賦活化は様々な値を示し,その原因として各パラボリックフライトにおける呼吸変化の関与が考えられた。
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