研究概要 |
電気生理学的手法ならびにCa^<2+>画像解析法を用いて視床下部視索上核および下垂体中葉細胞のプロスタグランディン(PG)の細胞内作用機構、受容体サブタイプの解析を行い、以下の成績を得た。 1.視床下部視索上核ニューロンにおけるPGの作用:視索上核(SON)にはPGE_2ならびにEP受容体が存在すること、PGE_2がバゾプレシンならびにオキシトシン分泌を促進することが知られている。そこでスライス標本を用いてラットSONニューロンに対するPGE_2の作用を解析したところ、約8割のニューロンにおいてPGE_2は興奮作用を示した。この作用は10^<-10>〜10^<-6>の範囲で濃度依存性であった。PGE_2以外のPGならびにPG受容体アゴニストで最も顕著な興奮作用を示したのはPGF_2αおよびFPアゴニストであるfluprostenolであり、EP,DP,IP,TPアゴニストの作用はこれらに比して弱かった。さらに単離SONニューロンにおいてホールセルパッチクランプ法によりPGE_2の作用を検討したところ、PGE_2は逆転電位が約-35mVの電流を生じること、この逆転電位はパッチ電極のCI濃度に影響を受けないことが判明した。さらに単離SONニューロンにFura-2を用いたCa^<2+>画像解析法を適用したことろ、PGE_2ならびにfluprostenolにより、著明な細胞内Ca^<2+>濃度の増加が観察された。またスライスパッチクランプ法をもちいてSONニューロンへの自発性シナプス入力を検討したところ、興奮性、抑制性シナプス入力ともにPGによって著明な影響を受けないことが判明した。これらの結果により、PGE_2は視索上核においてシナプス後膜に存在するPG受容体に直接作用して、非選択性陽イオンチャネルを活性化し、膜電位の脱分極を引き起こす結果、放電頻度を増加させること、膜電位依存性Ca2+チャネルを活性化して細胞内Ca^<2+>濃度を増加させることが明らかとなった。さらにPGE_2の作用は従来知られていたEP受容体ではなくむしろFP様受容体を介して作用している可能性が示唆された。 2.下垂体中葉細胞におけるPGの作用:下垂体中葉細胞にはEP受容体が高密度存在し、PGE_2により、αMSH分泌が抑制されること、細胞内Ca^<2+>濃度が減少することが報告されている。この作用機序を知る目的で、ホールセルパッチクランプ法を用いて中葉細胞の膜電位依存性Ca^<2+>チャネル電流(ICa)におよぼすPGE_2の作用を解析した。PGE_2は濃度依存性にICaを抑制し、この抑制はprepulse(150mV,50ms)百日咳毒素前処置により解除された。さらに同様のICaの抑制がEP1およびEP3アゴニストによってもみられた。これらの結果より、下垂体中葉においてPGE_2はEP1およびEP3受容体、百日咳毒素感受性GTP結合蛋白を介して膜電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制することが示唆された。
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