局所自動血流調節における新しいペプチド作動性神経の役割

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457024
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 後藤 勝年 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (30012660)
• 研究分担者: 粕谷 善俊 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (70221877) ; 石川 智久 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (10201914)
• キーワード: カルシトニン遺伝子関連ペプチド / 二酸化炭素 / 血流 / 血管弛緩 / カプサイシン / ラット

研究概要

ラットをウレタンで麻酔した後、総腸骨動脈にセットしたパルス・ドップラー血流計により下肢の血流を測定した。坐骨神経を10Hzで1分間電気刺激すると、刺激終了後より数分間持続する血流増加反応が認められた。この際、血圧、心拍数の変化は認められないことから、末梢部の血管抵抗の低下が起こっていると考えられた。d-ツボクラリンで前処置することにより、神経刺激による下肢の強縮、血流増加反応は共に消失することから、この血流増加反応は骨格筋の強縮により惹起される二次的な反応であると判断した。骨格筋収縮後の静脈血を総腸骨静脈から採取し、血中のpH、Po_2、Pco_2変化を調べたところ、興味深いことに、今回用いた神経刺激の条件では、Pco_2のみが著しく上昇していた。そこで、NaHCO_3を下肢動脈内へ局所的に投与することによりPco_2の上昇を誘導したところ、骨格筋収縮による反応と類似の持続的な血流増加反応が観察された。また、このNaHCO_3による血流増加反応は、カプサイシン、CGRP(8-37)により有意に抑制された。さらに、NaHCO_3投与により静脈血中のCGRP濃度が有意に上昇することも確認した。以上の結果から、骨格筋収縮による血流増加反応には、Pco_2の上昇が密接に関係しており、このPco_2の上昇により、カプサイシン感受性知覚神経の末梢端からCGRPが遊離されることが示唆された。本研究により、骨格筋の持続収縮により生じたCO_2がカプサイシン感受性知覚神経を興奮させ、その血管周囲末梢端からCGRPを遊離することにより血管を拡張させ血流増加をもたらすという、新しい神経性の局所血流調節機構の存在が明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Miyauchi,T.: "Calcitonin gene-related peptide induces more potent vasorelaxation in the resistance portion than in the conduit portion of mesenteric arteries in humans." Peptides. 17. 877-879 (1996)
• [文献書誌] Goto,K.: "Molecular pharmacology and pathophysiological significance of endothelin." Jpn.J.Pharmacol.72. 261-290 (1996)
• [文献書誌] Sakai,S.: "Inhibition of myocardial endothelin pathway improves long-term survival in heart failnre" Nature. 384. 353-355 (1996)
• [文献書誌] Tomobe,Y.I.: "Anticoagulant factor protein S inhibits the proliferation." Neuroscience Lett.214. 57-60 (1996)
• [文献書誌] Uesugi,M.: "Endogenous endothelin-1 initiates astrocytic growth after spinal cord injury." Brain Res.728. 255-259 (1996)
• [文献書誌] "Endogenous endothelin-1 participates in the maintenance of cardiac function in rats with congestive heart failnre" Circulation. 93. 1214-1222 (1996)