研究課題/領域番号 |
08457028
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
戸田 昇 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50025590)
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研究分担者 |
吉田 一秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00210683)
安屋敷 和秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10167968)
岡村 富夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70152337)
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キーワード | NO作動性神経 / 脳動脈 / 網膜中心動脈 / コリン作動性神経 / 一酸化窒素(NO) / サル / 高血圧 |
研究概要 |
我々の研究室から最初に報告した一酸化窒素(NO)を化学伝達物質とする血管拡張性神経(NO作動性神経)の存在は現在では国際的に容認されている。この神経の機能が、動物種、血管の部位、実験条件(生体位vs摘出)などを超えた普遍性をもつか否かを調べる為に、摘出サル脳および網膜中心動脈ならびに麻酔サルの血圧におけるNO作動性神経のはたらきを検討し、以下の成績を得た。(1)摘出サル脳動脈支配神経刺激による弛緩反応は、L-アルギニンより合成されるNOを介してひきおこされる。動脈壁にはNO合成酵素を含む神経に加えてコリンエステラーゼおよび血管作用性腸管ペプチド(VIP)を含有する神経が分布することを組織学的に確認した。その上で、コリン作動性神経から遊離されるアセチルコリンが、NO作動性神経機能をシナプス前ムスカリン性M_2受容体を介して抑制することを証明した。同時に存在するVIP作動性神経はNO作動性神経に影響を及ぼさない。(2)摘出サル網膜中心動脈においてNO作動性神経の存在を免疫組織化学的に示し、この神経が強い動脈拡張をひきおこすことを初めて明らかにした。(3)麻酔サルにNO合成酵素阻害薬を投与して得られる昇圧反応は、L-アルギニンによって拮抗されることから、L-アルギニンより合成されるNOがサルの血圧を低いレベルに維持する役割を果たすと考えられる。神経節遮断薬処置によってこの昇圧反応が強く抑制されることから、神経由来のNOの血圧調節への関与が大きいことが結論される。ヒトに近い血管反応性を示すサルにおける新しいNO作動性神経のこのような働きは、ヒトの脳、網膜および全身循環における神経由来のNOの重要性を強く示唆するものである。
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