本研究は血管局所で産生されるアンジオテンシンII(Ang II)の病態生理学的意義を解明することであり、特に我々が発見した従来のレニン-アンジオテンシン系に属さない酸素、キマ-ゼを介するAng II産生系の意義を明確にするものである。 本年度の研究対象であるカニクイサルの6ヶ月動脈硬化モデルを現在作製中である。また、本モデルのキマ-ゼ動態を解析するには、サルキマ-ゼの精製およびその遺伝子のクローニングを行い、その実体を明らかにしておく必要がある。本年度、上記モデル作製と併せてカニクイサルの血管組織よりキマ-ゼを完全精製し、そのアミノ末端のアミノ酸配列からサルマキ-ゼのcDNAクローニングに成功した。精製サルキマ-ゼは、これまでに我々が報告してきたAng IIを産生するイヌやハムスターのキマ-ゼより、さらにヒトキマ-ゼに近いAng II産生に特異性を示す酵素であることが判明した(現在投稿中)。また、cDNAからの予測全アミノ酸一次配列より、ヒトキマ-ゼ特異的と考えられてきたフリーのSH基や糖鎖がサルキマ-ゼには存在し、構造的にも極めてヒトキマ-ゼと類似していた。このcDNAからの情報をもとにサルキマ-ゼの特異的プローブを作成し、組織中のmRNA量をRT-PCRにて定量する方法を確立した。現在組織におけるマキ-ゼ抗体による免疫組織染色およびin situハイブリダイゼーションを用いた解析法の確立を行っている。 来年度以降は、サル動脈硬化モデルの脂質代謝を中心とした病態の組織学的、生化学追跡に加えて、病態組織におけるAng II産生機構をマキ-ゼを中心に解析し、レニン-アンジオテンシン系の阻害薬並びにマキ-ゼの阻害薬による薬物療法の理論的確立を追求する。
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