研究概要 |
1. 研究の目的と背景:遺伝子工学的に産生されるリコンビナントのタンパク質の糖鎖欠損という欠点を補うために、リコンビナントのタンパク質に生理活性を有する糖鎖を酵素的に合成し、これを導入する方法を開発し確立する。このため、グリコシダーゼの加水分解反応の逆反応としての糖転移反応を利用し、組み換え糖鎖の合成とこれをタンパク質に導入するという人工ブロテオグリカンの合成法の確立を目的として研究を進めた。 2. 研究の経過:当研究グループは、既に以下のような研究実績を挙げてきた。1)エンド型グリコシダーゼであるヒアルロニダーゼの主反応の逆反応としての糖転移反応の反応機構を解明し、コンドロイチン硫酸の酵素的組み換え糖鎖合成の道を拓いた(Biochemistry33,6505(1994))。2)糖鎖をタンパク質に導入するのに有効なキャリヤー糖鎖を発見した(J.Biochem.,109,514(1991))。3)キャリヤー糖鎖に結合した組み換え糖鎖をペプチドに導入するための酵素・エンド-β-キシロシダーゼを発見した(J.Biol.Chem.,265,854(1990))。 3. 研究の成果:1)エンド型グリコシダーゼを用いて糖鎖の組み換えを発展させ、コンドロイチン硫酸糖鎖と脱硫酸化されたデルマタン硫酸糖鎖の混成糖鎖の合成が可能になった。2)組み換え糖鎖の非還元末端側の構造を、質量分析装置を用いて決定する方法を見い出した。3)糖鎖をペブチドに導入するためのキャリヤー糖鎖の培養細胞におけるより効率的産生条件が見い出された。4)糖鎖の生物活性を測定するために、表面プラズモン共鳴装置による測定法を開発した。 4. 今後の課題:糖鎖の酵素的組み換えによる生物活性糖鎖の合成法は完成に向かっている。今後は先に発見されたエンド-β-キジロシダーゼを用いて糖鎖をペプチドに導入するための、条件の検討が進められている。
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