アラキドン酸酸素添加酵素のアイソザイムの分子生物学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457039
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 山本 尚三 徳島大学, 医学部, 教授 (50025607)
• 研究分担者: 鈴木 啓史 徳島大学, 医学部, 助手 (80253194) ; 林 陽子 徳島大学, 医学部, 助手 (60035441)
• キーワード: アラキドン酸 / シクロオキシゲナーゼ / リポキシゲナーゼ / アイソザイム / プロスタグランジン / 酵素誘導 / 転写調節 / 生理活性物質

研究概要

私達はリポキシゲナーゼの1つの12-リポキシゲナーゼに、基質特異性と一次構造の違いで区別される2種のアイソザイムが、種々の動物種と細胞種に存在することを明らかにして来た。また、シクロオキシゲナーゼには、従来知られていた酵素とは別のアイソザイムの存在が明らかにされ、従来のシクロオキシゲナーゼ-1(COC-1)に対してシクロオキシナーゼ-2(COX-2)と呼ばれている。こららのアラキドン酸酸素添加酵素のアイソザイムのそれぞれの遺伝子について、その転写調節機構を研究し、生理的病理的刺激による酵素の誘導と、細胞分化の過程での遺伝子発現の機構を明らかにするのが、本研究計画の目的である。
1) シクロオキシゲナーゼ-1遺伝子の転写調節因子:ヒト骨髄巨核芽球系白血病細胞(CMK)にTPAを与えると、1-2日の停滞期の後に酵素活性が上昇し始め、4日頃には当初の数倍に達する。COX-1が誘導されることは、mRNAと酵素蛋白の動態で確認された。COX-2は当初に一過性に出現した。現在トロンボポエチンによる細胞分化に伴うCOXの動きを追っている。
2) シクロオキシゲナーゼ-2遺伝子の転写調節因子:マウスMC3T3-E1細胞はTNFαによって、迅速で一過性の典型的なCOX-2の誘導を示す。NFkBとNF-IL6の関与を明らかにしつつあり、抗炎症性グルココルチコイドの抑制効果を調べている。
3) 血小板型12-リオポキシゲナーゼの転写調節の研究:先に私達がクローニングしたヒト赤白血病細胞(HEL)12-リポキシゲナーゼのcDNAを発現させて得たリコンビナント酵素を抗原として抗体を作り、それを使ってマウスの骨髄、小腸、皮膚などの血小板型12-リポキシゲナーゼの局在と、その細胞内分布を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] H.Ikawa: "Arachidonate 12-lipoxygenase in porcine anterior pituiary cells:its localization and possible function in gonadotrophs" J.Endocrinology. 148. 33-41 (1996)
• [文献書誌] K.Kishimoto: "Suicide inactivation of porcine leukocyte 12-lipoxygenase associated with its incorporation of 15-hydroperoxy-5,8,11,13-eicosatetraenoic acid" Biochim.Biophys.Acta. 1300. 56-62 (1996)
• [文献書誌] Y.Harada: "Role of prostaglandin H synthase-2in prostaglandin E_2 formation in rat carrageenin-induced pleurisy" Prostaglandins. 51. 19-33 (1996)
• [文献書誌] M.Nakamura: "Subcellular localization of arachidonate 12-lipoxygenase and morphological effect of its overexpression on murine keratiocytes" Cell Tissue Research. in press.
• [文献書誌] N.Ueda: "Induction of cyclooxygenase-1 in a human megakaryoblastic cell line(CMK)differentiated by phorbol ester" Biochim.Biophys.Acta. 1344. 103-110 (1997)
• [文献書誌] 山本 尚三: "マウス骨芽細胞MC3T3-E1における脂肪酸シクロオキシゲナーゼの誘導" ビタミン. 70. 453-463 (1996)