12-リポキシゲナーゼならびにシクロオキシゲナーゼ(COX-1とCOX-2)のアイソザイムの病態生理的役割が注目されている。それぞれの遺伝子について、その転写調節機構を研究し、生理的病理的刺激による酵素の誘導と、細胞分化の過程での遺伝子発現の機構を明らかにするのが、本研究計画の目的である。 1) シクロオキシゲナーゼ-1遺伝子の転写調節因子:ヒト骨髄巨核芽球系白血病細胞(CMK)にTPAを与えると、1-2日の停滞期の後に酵素活性が上昇し始め、4日頃には当初の数倍に達し、COX-1が誘導されることがmRNAと酵素蛋白の動態で確認された。血小板には存在しないプロスタグランジンD合成酵素が、CMKに発現していることが明らかになった。 2) シクロオキシゲナーゼ-2遺伝子の転写調節因子:マウスMC3T3-E1細胞はTNFαによって、迅速で一過性の典型的なCOX-2の誘導を示し、NFkBとNF-IL6が関与することが明らかにされているが、このCOX-2誘導が抗炎症性グルココルチコイドによって抑制される。COX-2遺伝子のプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子につないで、グルココルチコイドの効果を検討した。また、炎症モデルのラット胸膜炎でCOX-2が誘導されて、プロスタグランジンE_2を作ることが示された。 3) 12-リポキシゲナーゼアイソザイムの自殺失活機構:白血球型酵素は著明な自殺失活するが、血小板型酵素はほぼ直線的に反応が進む。その機構の違いとして、前者では12-ヒドロペルオキシ酸に加えて15-ヒドロペルオキシ酸を生じ、それがエポキシ化されるに伴って酵素を失活させることを示唆する知見を得た。 4) 12-リポキシゲナーゼ遺伝子の転写調節:台湾の成功大学との共同研究で、ヒト皮膚癌由来のA431細胞の血小板型12-リポキシゲナーゼのEGFによる誘導にSP-1の関与することが示された。また、ラット松果体の白血球型12-リポキシゲナーゼに日周リズムが認められた。
|