研究概要 |
造血組織で合成されたヘムの殆どはヘモグロビンの補欠分子族として利用されている。このような造血組織のヘム合成は造血系の転写因子により調節されており、その律速酵素が赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)である。 我々は、本酵素の先天異常であるX染色体性鉄芽球性貧血(XLSA)の一症例を解析した。本症例において見い出されたアミノ酸異常は酵素の活性異常を伴わなかったが、ミトコンドリア輸送後の成熟酵素の分子量に異常が認められた。本先天異常は酵素蛋白のプロセシング部位よりはるかに下流に存在しており、ミトコンドリア膜透過とプロセシングが同時に起きると考えればこのような減少は有りえない。従って、本酵素においては膜透過の後に(蛋白構造の形成に伴って)プロセシングが起きていると考えられる。(Furuyama et al.,1997)。 また、我々は本酵素を介して合成されるヘムが赤血球系転写因子のNF-E2を介して赤血球分化に影響を与える可能性を報告しているが、最近、この転写活性化にはRas-Raf-MAPキナーゼが関与すること、NF-E2(p45)のN末側に活性化ドメインが、MafK(p18)のロイシンジッパー領域に抑制ドメインが存在することを明らかにした。(Nagai et al.,1998)。 一方、一般型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-N)遺伝子においては NFkB認識配列が負の調節に関与していること、また赤血球系転写因子の存在しない組織において造血ホルモンであるエリスロポエチンがALAS-Nを介してヘモグロビン合成を行い得ること(従って転写を制御することによってXLSAの治療に応用できる可能性があること)を見い出した。
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