研究概要 |
1. ラットならびにマウス脳の発達と神経回路網形成過程でのCdk5の蛋白質、mRNAレベルでの発現、その活性及びリン酸化状態の変動を解析した。免疫染色及びNorthern blot解析により、p35は胎生12日ではほとんど検出されず、胎生18日になり増加し、生後2週目で発現は最大になり、3週目から以降は徐々に減少した。またCkd5の発達に伴う発現変化もp35とほぼ同様の変化を示した。Cdk5活性を合成ペプチドを基質として用い解析したところ、Cdk5とp35の蛋白質の変化とよく一致した。免疫染色及びin situハイブリダイゼーション解析でp35は神経細胞特異的に存在し、グリア細胞には存在しなかった。アダルトラットの神経細胞では、p35は細胞体や樹状突起に存在したが、幼弱なラットの神経細胞では軸索に多く存在していた。 2. p35あるいはCdk5高発現型トランスジェニックマウスの作成を引き続き試みたが不成功に終わった。 3. アルツハイマー脳のCdk5,とアクティベーターであるp35,p39、さらにこれらのインヒビターとしてp27,p21などの関与を解析した。Cdk5とp35はアルツハイマー脳で対象として用いた同年齢の脳に比べ、海馬において約30%多い発現が認められた。p27及びp21については免疫化学的に発現は確認したが、量的な差は認められなかった。 以上より、ラットならびにマウス脳の胎生後期から生直後の発達における神経回路網形成の過程で、Cdk5/p35が重要な役割を果たすとともに、アルツハイマー病態においても関連性があることが示唆された。
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