研究概要 |
ラット及びマウスの脳においてCdk5/p35の活性が生後約2〜3週で最も高くなっていた。Cdk5,p35の含量変動では、Cdk5は週令を通じてほとんど変化せず、p35が活性と同期して増減を示した。、両者の分布は胎生12日目より発現し、生後2週目で最も染色性が高くなった。これは活性の変動と同じであった。部位別では海馬に最も多かったが、皮質をはじめほとんどの脳の部位において神経細胞特異的に発現していた。 ヒトのアルツハイマー(AD)脳とそれと同年齢の対象脳をそれぞれ12検体をカナダ・カルガリ大学医学部のDr.Clarkより入手した。部位的には前頭葉が主で10例あり、海馬も4例あった。これらの脳切片を用い抗Cdk5抗体を用いた免疫染色法でCdk5が脳のどの部位に存在するかを解析した結果、AD脳で見られる老人斑部によく一致して認められた。また全体的にもAD脳で対象脳より高い染色性が認められた。p35の発現についてもこれら脳切片を用いて調べているがCdk5に比べて明らかな差を見いだせず、比較的均等に染色性が認められた。一部抗体にも原因があると考えられたので、in situ hybridization法にてmRNAの分布を調べたが、これにも明らかな差が認められなかった。Cdk5活性を凍結脳標品について測定したところ、前頭葉でも海馬でも10〜20%高い活性を認めた。老人斑の部分においてはさらに高い活性を持つことが予測された。AD脳のCdk5,とアクティベーターであるp35,p39、さらにこれらのインヒビターとしてp27,p21などの関与を解析した。Cdk5とp35はAD脳で対象として用いた同年齢の脳に比べ、海馬において約30%多い発現が認められた。p27及びp21については免疫化学的に発現は確認したが、量的な差は認められなかった。 Cdk5及びp35のPC12細胞に対するトランスフェクション実験は、アデノウィルスを用いる系において遂行した。両者の発現はPC12細胞において確認したが、明らかな表現型の変化を来さなかった。p35あるいはCdk5高発現型トランスジェニックマウスの作成を引き続き試みたが不成功に終わった。AD脳のCdk5,とアクテイベーターであるp35,p39、さらにこれらのインヒビターとしてp27,p21などの関与を解析した。Cdk5とp35はAD脳で対象として用いた同年齢の脳に比べ、海馬において約30%多い発現が認められた。p27及びp21については免疫化学的に発現は確認したが、量的な差は認められなかった。 以上より、ラットならびにマウス脳の胎生後期から生直後の発達における神経回路網形成の過程で、Cdk5/p35が重要な役割を果たすとともに、アルツハイマー病態においても関連性があることが示唆された。
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