研究概要 |
1.脳の脂肪酸長鎖伸長酵素系の第一段階の律速酵素であるアシルCoA縮合酵素は不安定で未だに精製されておらず、その性状もほとんど明らかにされていない。 (1)このアシルCoA縮合酵素反応を促進する因子をミクロソーム中に見いだし、その性状をほぼ明らかにすることができた。(2)この促進効果を牛血清アルブミンで代替しうることが明らかになった。オボアルブミンでは代替できない。(3)アシルCoA縮合酵素反応機構を解析して、基質の飽和Acyl-CoAと不飽和Acyl-CoAが相互に反応を制御しあっていること、及びCa^<2+>の存在により内在性基質の生合成が高まり、結果としてAcyl-CoA縮合活性促進に働き、また外部から添加した基質の縮合活性は抑制されることを明らかにした。(37th International Conference on the Biochemistry of Lipids,Antwerp (Belgium) Sept.4-7,1996において発表) これらの結果は、シトクロムb5還元酵素につながる脳の脂肪酸伸長酵素系の反応機構とその病態解明への方向を与えるものと考えられる。 2.2型遺伝性メトヘモグロビン血症知能神経障害の解析を行っていく過程で、脂質代謝に関連した脳の高次機能に関する基礎的機構の解析がほとんどなされていないことが判明し、この解析を行った。その結果、(1)脳の海馬領域におけるシナプス小胞の代謝回転と脂肪酸代謝の関連を解明した。(2)脳脂質の変動と学習にともなうシアル酸など細胞膜表面構造及び機能的変動が明らかになった。(3)脂質代謝に関連するホスホリパーゼA2の精製と性状の解析を行った。
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