これまでに、長時間作動型SODや血管内皮細胞指向性SODを開発し、特定の組織細胞局所でスーパーオキシドを特異的に消去して解析した結果、高血圧をはじめとする循環病態に活性酸素が深く関与する事が判明した。血管局所で発生する活性酸素が循環制御に重要な役割を果たすことが判明し、抹消組織と脳血圧中枢における活性酸素代謝の意義を解析した。Mannoseレセプター含有細胞に特異的に集積するMannose結合SOD(MAN-SOD)を合成して静脈内投与したところ、正常動物の血圧が瞬時に低下したことから、Mannoseレセプター含有細胞が全身の血圧維持に重要な役割を担うことが判明した。本降圧作用に関与するMannoseレセプター含有細胞を同定する目的で、放射性標識MAN-SODの組織分布を解析した結果、その90%以上が肝のKupffer細胞と脾臓マクロファージに取り込まれた。しかし、75%肝切除および脾摘出動物でも本降圧反応が認められることから、その責任細胞はこれら以外の細胞であることが判明した。本降圧現象には痲酔剤感受性を示す興奮性細胞が関与することが示唆されたが、アトロピンやグアネチジンなどの神経遮断薬では影響されず、自律神経系以外の関与が示唆された。中枢神経系における放射活性は特に顕著な集積性を示さないことから、本責任細胞は比較的小さな領域に局在する可能性が考えられた。 さらに、抗ヒトSOD抗体を用いた免疫組織学的解析を行ったが、未だ著明な分布領域を見つけることには成功していない。今後、孤束核や血圧中枢のNO神経などを中心に解析を進めると同時に、マンノースレセプター含有細胞に集積するスーパーオキシド発生系を開発し、これにより特異的昇圧反応が誘起されるか否かを検討つつある。
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