研究課題/領域番号 |
08457055
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
錦見 盛光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20022816)
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研究分担者 |
松井 仁淑 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (50209475)
白石 則之 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (30133169)
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キーワード | 銅結合タンパク質 / S100bタンパク質 / 溶血 / 活性酸素障害 / 抗酸化作用 / 大腸菌 |
研究概要 |
昨年度の研究において脳に豊富に存在するS100bタンパク質が銅イオンを結合する能力を持つことを見出し、ラットのS100bタンパク質をグルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合タンパク質として大腸菌において発現させる系を確立した。本年度はこの系を用いて銅と過酸化水素による酸化ストレスに対して、S100bタンパク質が防御的に働きうるか否かを中心に検討した。融合タンパク質を発現している大腸菌は、1mMCuCl_2存在下で培養した後、過酸化水素(1〜4mM)で処理した場合、グルタチオンS-トランスフェラーゼのみを発現している大腸菌に比べ有意に菌の生存率が高かった。後者の菌では、銅イオン濃度を0.75mMCuCl_2に下げた条件でも生存率が1mMCuCl_2処理の融合タンパク質発現菌より低く、S100bタンパク質が酸化ストレスに対し強力な防御作用を発揮することを証明できた。また、菌のサイトソ-ルのゲルクロマトグラフィーによってS100bタンパク質が実際銅イオンと結合して存在していることを確認した。さらに、赤血球の銅イオンによる溶血作用に対してもS100bタンパク質が制御作用を示すことを明らかにした。銅イオンの存在下にS100bタンパク質がジスルフィドに量体を形成すること、またこの反応がアスコルビン酸の共存により阻害を受けることを見出すとともに銅結合部位をタンパク化学的に推定した。動物培養細胞にS100bタンパク質を遺伝子導入によって発現させる実験も試みたが、細胞の増殖が遅くなる傾向を示したので現在誘導発現が可能な培養細胞の実験系の確立を行っている。
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