研究課題/領域番号 |
08457057
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
永松 信哉 杏林大学, 医学部, 助教授 (80231489)
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研究分担者 |
佐和 弘基 杏林大学, 医学部, 講師 (80135912)
渡邊 卓 杏林大学, 医学部, 助教授 (00191768)
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キーワード | インスリン分泌 / 膵β細胞 / SNAP / Syntaxin / NSF / 調節性分泌機構 / 構成性分泌機構 |
研究概要 |
膵β細胞からのインスリン分泌機構を分子レベルから理解することは細胞生物学的側面のみならず、糖尿病の成因解明のための医学的側面からも、極めて重要な課題であると考えられる。しかしながら極最近までそのほとんどの研究が、昔ながらの生理学的、薬理学的手法を用いたものであり、具体的なインスリン分泌分子機構に関してその詳細は明らかにされてはいなかった。遺伝子工学技術の急速な進歩は、膵β細胞のグルコースセンサーと考えられるGLUT2、Glucokinase等の遺伝子構造を明らかにすると共に、インスリン分泌と密接に関連しているイオンチャンネルとの連関をも明らかにするなど、インスリン分泌の分子機構も徐々にではあるが、その解明の糸口が見えてくるようになってきた。一方、近年、神経伝達物質の開口放出の分子機構の解明が急速に進み、特にシナプス小胞の細胞膜へのdocking、fusionを制御する種々の蛋白質が単離され、その機能が解明されてきた。神経細胞からのexocytosisと、内分泌細胞からのそれとを同一次元で論ずる事は出来ないが、両者の間には共通した分泌機構が存在すると考えられ、私達は神経細胞で単離された分子を指標として、膵β細胞におけるインスリン分泌顆粒の細胞膜への移送、及び細胞膜とのdocking/fusuin機構を、特にグルコース制御機構との関連から解明することを目的として研究を行った。本年度は、docking/fusionに関わる蛋白質として、α-SNAP、Syntaxin 1A/hpc-1に焦点をあて、これら蛋白質の膵β細胞における発現、及びその機能を解析した。特にこれら蛋白質のin vivoでの機能解析において、私達はadenovirusを用いた外来遺伝子の動物細胞への発現系を確立し、この方法により膵ラ氏島へ効率的に遺伝子を導入することが可能となり、その結果、正常膵β細胞における蛋白質機能解析が可能となった。α-SNAPは、膵β細胞からのインスリン分泌制御機構において促進因子として機能していた。更に、α-SNAPのmutant蛋白質を用いた検討から、α-SNAPの作用は主にSyntaxin 1Aとの結合を介して行われていることが明かとなった。一方、Syntaxin 1Aは、インスリン分泌制御機構において抑制的に働いており、又、Sucrose gradient法を用いた検討により、この蛋白質は、膵β細胞の形質膜のみならず、インスリン分泌顆粒にも存在し、機能していることが示唆された。
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