研究概要 |
骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome,MDS)の病態およびその白血病化機構を解析するにあたり,MDS症例の骨髄組織を用いて以下の検索を行い新たな知見が得られた。 MDS症例では,正常に比較してマクロファージ系細胞が増加しているのに対し,de novoのAML症例ではマクロファージ系細胞は著明に減少していること,MDS症例では,マクロファージ系細胞の細胞質内には免疫組織化学的にtumor necrosis factorα (TNFα)が局在し,RT-PCR法による検討でTNFα遺伝子のmRNA発現増強がみられるのに対し,de novoのAMLやCMLおよび非血液疾患症例では,mRNAレベルでのTNFα遺伝子発現の増強は認められなかったこと,さらに,TUNEL法による骨髄組織のアポトーシス現象の検討では,MDS症例ではde novoのAMLやCMLおよび非血液疾患症例に比較して,アポトーシスに陥っている細胞の比率が有意に高いことが示された。これらのことより,MDS症例の骨髄では増加したマクロファージ系細胞がTNFαを産生分泌し,それを介した造血抑制およびアポトーシス促進がMDSにおける無効造血,血球減少を惹起する要因の一つとなっているものと考えられる。 なお,MDS骨髄においてISH法によるEpstein-Barr virus (EBV)感染の有無を検討したところ,EBV感染は極く稀なことであり,MDS症例におけるマクロファージ系細胞の増加・活性化,それに伴うTNFα遺伝子発現の増強にはEBVは殆ど関与していないという結果を得ている。 その他,癌抑制遺伝子であるP^<53>遺伝子の変異が顆粒球系細胞に発現しているMDS症例は,全例ともovertな白血病に移行していることも明らかにしている。
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