研究概要 |
(1)琉球大学および大阪大学の咽頭癌におけるEBVゲノムの有無をしらべたところ,いづれの地区でも上咽頭癌にのみ高率にゲノムを認めた.中,下咽頭癌にはEBVゲノムのみられる症例は一例もなかった.多変量解析により,EBVゲノムの有無と有意に関連している因子を調べたところ部位のみが重要な因子であることが判明した.今後は何故,上咽頭眼のみでEBVによる発癌が起るかということについての検討が必要となる.(2)従来,EBV関連腫瘍としてよく知られているのは悪性リンパ腫と上咽頭,唾液腺,胃,胸などから発生する癌である.一方,AIDSなど免疫不全患者に発生するリンパ腫に高率にEBVゲノムが検出されることが知られている.そこで全国調査により腎移植患者に発生した悪性腫瘍を収集し,EBVゲノムを調べた.腎移植に際して免疫抑制剤が投与されている.70例について調べたことろ,リンパ腫においてのみEBVゲノムが検出された.癌は全てEBVゲノム陰性であった.(3)中国蘚州および大阪地区の胃癌におけるEBVゲノムの有無を調べたところ,中国の8%,大阪の6%にEBVゲノムをみとめた.latent membrane protein-1の発現はいづれも陰性でLat Iのパターンを示した.EBV感染細胞の排除に関係していると考えられているHLA-A2を調べたところ64%の症例はA2型を示した.しかし,A2型と他のHLA型の間において,腫瘍周囲のリンパ球浸潤の程度に差はなかった.(4)EBV関連リンパ腫の一つである鼻腔リンパ腫におけるEBVゲノムの有無をNK細胞関連マーカーであるCD56発現との関係において調べた.又,EBVの亜型(A,B型)も調べた.その結果,CD56発現症例の85%がゲノム陽性であり,この両者の密接な関連が示された.EBVの亜型は大部分がA型であった.スイスからの報告では約半数がB型であったと報告されていることから,鼻腔リンパ腫のEBV亜型には地域差のあることが考えられる.
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