研究概要 |
本年度は,肺大細胞癌の初期像検索の目的で,主として未分化大細胞より成る肺癌20例につき,病理組織像を解析し,さらに免疫組織化学的にサイトケラチン,epithelial membrane antigen(EMA),ビメンチン,neuron specific enolase(NSE)などの発現を検討した.その結果,(1)径3cm以下の腫瘍の2症例はhomogeneousなリンパ上皮腫様癌で,EB virusのLMP1陽性腫瘍細胞が散在していた.(2)腫瘍径3cm以下の他の5症例では全例(100%)に,一方,腫瘍径が3cmを肥える13症例では10例(76.9%)に扁平上皮癌様あるいは腺癌様分化の部分が認められた.また,腫瘍径の増加に比例して未分化大細胞の腫瘍全体に占める割合が増大した.(3)腫瘍径が3cmを越える症例の残り3例では,2例が未分化大細胞のみで,また,1例は神経内分泌性の大細胞で構成されていた.(4)腫瘍組織の扁平上皮癌様あるいは腺癌様分化を示す部位ではサイトケラチンが強陽性で,EMAが細胞膜に陽性であった.(5)未分化な部位では,サイトケラチンは陰性傾向を示し,ビメンチンおよびNSEが強陽性で,EMAが細胞質と膜に陽性であった.以上の結果より,(1)多くの肺大細胞癌は扁平上皮癌または腺癌の脱分化あるいはプログレッションによって生ずること,(2)EB virusと関連する少数例は最初からリンパ上皮腫様癌として発生すること,(3)大細胞性神経内分泌癌の経路もあることなどが示唆された. 肺小細胞癌については混合型腫瘍の小細胞癌部と非小細胞癌部につき,遺伝子異常からみたクローン性解析を継続している.現在までに,両部位が異なったクローンより成ることを示唆する興味深い結果が出ているが,症例数の増加と解析方法の改良に努め,結論を急いでいる.
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