研究概要 |
本年度は,肺小細胞癌の組織発生検索の目的で,小細胞癌と非小細胞癌の混合型腫瘍のクローン性をp53遺伝子異常の起こり方から検討した.即ち,p53の点突然変異部位が小細胞癌部と非小細胞癌部で同じならば,両者は単一のクローンで共通の組織発生を示すとみなされるが,点突然変異部位が異なれば,両者は別個に組織発生をすることが示唆される.予備実験としてpureな小細胞癌11例におけるp53遺伝子を調べたところ,点突然変異は7例に認められ,その部位はexon5(2例),exon6(1例),exon7(2例),exon5およびexon6(2例)と多岐にわたり,ほとんど同一例が認められなかった.混合型は4症例に点突然変異をみたが,その部位はいずれもexon5に集中していた.しかし,codon部位については,症例1でcodon162(小細胞癌部)とcodon137(扁平上皮癌部),症例2でcodon137+codon165(小細胞癌部)とcodon168+codon184(腺癌部),症例3で変異なし(小細胞癌部)とcodon137+codon162(扁平上皮癌部)およびcodon178(腺癌部),症例4で変異なし(小細胞癌部)とcodon137(小細胞癌+扁平上皮癌部)およびcodon137(扁平上皮癌部)の結果であった.即ち,小細胞癌と非小細胞癌で点突然変異部位の一致はみられず,両者は別個のクローン性を有することが示唆された.症例4で小細胞癌と扁平上皮癌の混在部と扁平上皮癌部の点突然変異部位が一致したのは扁平上皮癌の異常p53によるものと思われた.扁平上皮癌部を有する症例はいずれも同部でcodon137の変異を呈したことも興味深い. また,アポトーシス細胞同定のためにTUNEL法に関する基礎実験を行い,論文に完成した(Arch Pathol Lab Med,1998).さらに,HUMARA遺伝子によるクローン性解析に関し,bowenoid papulosis病変が単クローン性を示さないことも論文に完成した(Diagn Mol Pathol,1998).
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