研究概要 |
われわれが独自に樹立した多分化能ヒトEC細胞G3細胞を用いて本年度は以下の成果を得た. I.ヒトEC細胞分化関連分子EAT遺伝子の機能解明 1)EAT遺伝子導入マウスを2系統を得た.これらのマウスの一部には肥満細胞の白血病化が認められた.また,多くのマウスで病的な肝脂肪変性を見た.これらの詳細な解析が来年度の課題である. 2)p53を欠くマウス線維芽細胞である10(1)細胞を用いて本遺伝子のstable導入系を樹立した.同細胞に対してcis-Diamine platinum(CDDP)を作用させた結果,同剤によるアポトーシスを有意に抑制した.本遺伝子が機能的にもBcl-2に匹敵することが明らかとなった. 3)EAT遺伝子の組み替え体(EAT)を用いて2種のマウスモノクローナル抗体を作成した.本抗体を用いてヒト胎児および正常組織におけるEATの分布を免疫組織学的に検討した.その結果,気管上皮,導管上皮などの単層上皮とリンパ網内系組織に発現が認められた. II.G3細胞から得た細胞膜を認識する分子の機能解析と病態診断,治療への応用 1)精巣胚細胞腫瘍の前癌病変であるintratubular malignant germ cellと分化初期の精細胞,卵細胞を特異的に認識するHB5,HF2,HE11抗体を得た.これらの抗体は新たながん胎児抗原を認識しており,抗原の単離と遺伝子クローニングが来年度の課題である.抗体の認識する抗原の決定. 2)胎児性癌を特異的に識別する4C4抗体を用いて,胎児性癌と病態の異なる他の胚細胞腫瘍を識別する病理組織診断.細胞診の確立がなされ,本抗体が広く一般の検査室で用いられる段階に至った.
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