我々はhepatitis C virus(HCV)に血清マーカー陰性(HBsAg陰性・サイレント)のhepatitis B virus(HBV)が高頻度(おそらく全て)に重感染している事実を発見した。HCVにサイレントHBVが高頻度に重感染しているということは、たまたまふたつのウイルスが同じ経路でひとつの肝臓に連続して感染したというのではなく、どちらかのウイルスの増殖にもうひとつのウイルスの存在が必要だということを意味していると想定される。その場合、サイレントHBVのみに感染し発病している患者が存在するため、サイレントHBVがHCVの感染と増殖に必要であると仮定される。そこでこのサイレントHBVDNAをクローニングし、複製可能なhead-to-tail dimerを作製し、HCVRNAとともにヒト肝細胞癌由来の樹立細胞株であるHuH-7細胞にin vitroで同時トランスフェクションし、培養上清中に分泌されるHCVRNAを定量した。コントロールとして、HCVRNAのみのトランスフェクション、HCVRNAと野生株(HBsAg陽性)HBVDNAの同時トランスフェクションを用意した。その結果、サイレントHBVDNAとの同時トランスフェクションはHCVRNA単独に較べ5倍までHCVRNA分泌量が多く、逆に野生株HBVDNAは同時にトランスフェクションしたHCVRNAの分泌をHCVRNA単独に較べ8倍まで抑制した。この後者の現象はウイルスの相互干渉として通常観察されることである。これに対し、サイレントHBVDNAはHCVRNAの複製と発現を亢進していることが強く示唆され、この方面の今後の研究の基礎が築かれたことになる。
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