従来、ループス腎炎の発症機序における抗体分子の役割については、II型、III型アレルギーの概念の中で捉えられてきた。我々はループス腎炎類似の糸球体病変を発症するMRL/lprループスマウスからワイヤーループ型や管内増殖型糸球体病変をそれぞれ個別に誘導する単クローン性抗体を得、その発症機序を明らかにする目的でこれらの抗体と血管内皮細胞との相互反応を解析した。 ワイヤーループ型病変を誘導する抗体は、少なくとも血管内皮細胞膜成分に対する結合活性を有さず、細胞のFcレセプターや酸化LDLレセプターを介さずにendocytosisされtransendot helial transportおよびリソソーム系にて処理されることが明らかとなった。臨床応用を目的として、特定のreno-vascular diseaseの患者血清lgGがendocytosisされることを見出し、新たな疾患カテゴリーを提唱し得る糸口を得た。 管内増殖型病変を誘導する抗体は、血管内皮細胞にE-selectinの発現をtranscriptionレベルで誘導していること、TNFによる機序とは異なり、endocytosisがそのシグナルとして作用していることが判明した。正常マウスにこの抗体を投与すると糸球体内皮細胞にE-selectinが誘導され糸球体腎炎が発症すること、soulible E-selectinトランスジェニックマウスではその発症が抑制されることから、この抗体による糸球体内皮細胞のE-selecinの発現が糸球体腎炎の発症のinit iationとなっていることを明らかにした。この事実は、より普遍的に、抗体による細胞傷害機序において、従来のII型、III型アレルギー反応の概念では説明できない機序の存在を示すものであり、さらには血管内皮細胞のendocytosisおよびE-selectinの誘導にそれぞれ関わる新たなレセプター分子やそのシグナル伝達機構が存在する可能性を示唆している。
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