慢性関節リウマチ肉芽巣抽出液から精製した単球走化因子は、アミノ末端部の配列が蛋白合成装置リボゾームのS19蛋白と相同であり、しかも分子量が2倍であったことから、この走化因子はS19蛋白の架橋化2量体と想定した。 本研究では、この仮説を実証するために、ヒトS19リボゾーム蛋白組み換え体を2種作成した。1種はアミノ末端部にマルトース結合蛋白を融合したキメラ蛋白で、他の1種は同末端部に(His)6タグを付属させたもので、共に大腸菌を用いて発現させた。これらの組み換え体をアフィニティーカラムを用いて精製し実験に供することにより以下の結果を得た。結果はいずれの組み換え体を用いた場合も同様であった。 結果、1)S19蛋白組み換え体単量体は、単球走化活性を有さなかった。2)S19蛋白にトランスグルタミナーゼ(活性型XIII因子と細菌性トランスグルタミナーゼの2種を用いた)を作用させたところ、S19蛋白2量体が形成され、これと同じ経時変化で、単球走化活性が発現した。3)この反応系に、架橋化の競合阻害剤であるダンシルカダベリンを共存させると、その濃度依存性に走化活性の発現が抑制された。4)S19蛋白2量体を含む上記反応液をゲル濾過カラムクロマト法で展開したところ、2量体を含む分画にのみ走化活性が存在した。5)この画分をモルモット皮内に接種したところ、単球/マクロファージ優位の白血球浸潤が惹起された。 以上の結果は、上記の仮説、すなわちS19リボゾーム蛋白は、架橋2量体化により単球特異的走化活性を発現することを実証した。
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