研究概要 |
1 トランスジェニックマウスの作出 アルブミンプロモーター/エンハンサーとSRαプロモーターを利用して3種類の導入遺伝子、Alb-HN3.8、Alb-HN2、ME-HN2を構築した。C型肝炎ウイルス遺伝子構造蛋白質C,E1,E2領域を含む3.8kbの部分遺伝子(HN3.8)と全長遺伝子9.4kb(HN2)を導入したものである。各々3ライン、19ライン、9ラインを作出したが、肝臓での発現は8週令まで検出できなかった。C型肝炎ウイルス遺伝子導入マウスでは、導入遺伝子の発現が著しく抑えられることがわかった。 2 トランスジェニックマウスにおける導入遺伝子の発現誘導 導入遺伝子発現抑制が如何なる機構によるものかを解析するために、メチル化の機序を検討した。メチル化感受性の制限酵素によるサザンブロット法と、bisulfiteゲノムシーケンス法によるメチル化シトシンのマッピングにより、顕著にメチル化されていることが明らかとなった。そこで脱メチル化剤5-アザシチジン投与による発現誘導を試みたところ、6ラインのうち4ラインで発現誘導がみられた。C型肝炎ウイルス導入遺伝子の発現抑制は、高度のメチル化によることがわかった。 3 トランスジェニックマウスによる肝炎発症と遺伝子発現 7ヶ月から22ヶ月長期飼育したトランスジェニックマウスのなかに、病理組織学的な検索から肝内巣状壊死を示す個体や、腹水貯溜を伴う肝炎発症個体を観察した。Alb-HN3.8では2/2に、Alb-HN2では3/4に、ME-HN2では5/6に、軽度のものを含めて肝炎を観察した。これらの肝組織では導入遺伝子の発現も観察された。現在、これら病変の観察された系統について個体数をふやし、2年間の長期観察実験をすすめている。ヒトC型慢性肝炎は、PCRで始めて検出されるような微量なウイルスの増殖とその遺伝子発現で起こる疾患である。そういう意味では、本研究で得られたトランスジェニックマウスはヒトに近いモデルマウスともいえる。導入遺伝子発現のコントロールや免疫系の導入をしながら、よりヒトに近い肝炎肝癌のモデル動物の検討を進める。
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