研究概要 |
正常マウス末梢CD4T細胞の約10%を占めるCD25(IL-2α鎖)発現T細胞を除去すると、ヒトの自己免疫病と免疫病理学的に酷似した様々な病変(胃炎、甲状腺炎、副腎炎、糖尿病、卵巣炎等)が高率に発症し、CD25+細胞を一定期間内に補えば病変発症は阻止される。これは、末梢における自己反応性T細胞の活性化・増殖が、他のT細胞による制御を受けており、その制御機構の破綻は様々な自己免疫病の直接的原因と成りうることを意味する。CD25+T細胞による自己寛容維持の分子的機序を解明するため、CD25+T細胞を条件的に一定期間除去でき、その結果自己免疫病を自然発症するトランスジェニックマウスの作製を計画し、現在遺伝子コンストラクトをマウス卵に導入中である。一方、自己免疫病発症阻止能を持つCD25+T細胞について、それらが発現するT細胞抗原レセプターVα/Vβ群に偏りがなく、IL-2β鎖、NK1.1分子を発現しておらず、NKT細胞とは異なるとの結果を得た。またCD25+T細胞の自己免疫阻止能について、FACSで調整したCD25+T細胞が構成的に産生しているサイトカインをRT-PCRで検索し、IL-4,IL-10,TGF-βがこの範疇に入ることを見い出した。それらについて、特異的中和抗体のin vivo投与がCD25+T細胞除去の代わりとなるか、またこれらの遺伝子を組み込んだ発現プラスミドを筋注し血中濃度を上げた場合自己免疫病の発症が阻止されるか検討している。CD25+制御細胞の抗原特異性については、正常T細胞のコンカナヴァリンA刺激により作製した活性化T細胞の移入によって自己免疫病の発症を阻止できたが、卵白アルブミン特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウス由来T細胞を抗原特異的に活性化しても阻止できなかった。制御T細胞の抗原特異性についてさらに検討中である。
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