研究課題
住血吸虫感染が他の寄生虫に対する感染防御にどのような影響をもたらすかをマウスで調べた。腸管内寄生蠕虫であるヴェネズエラ糞線虫(ヴ糞線虫)は住血吸虫の先行感染があると全く寄生できなくなった。ヴ糞線虫は幼虫が経皮感染して肺から気管を経て腸管で成虫になる。住血吸虫感染マウスは幼虫と成虫の両方に対して完全な防御を示した。この防御能は住血吸虫感染8週以降に成立するが、住血吸虫の単性寄生では全く成立しなかった。この効果は日本住血吸虫、マンソン住血吸虫のいずれでも観察された。このことから、宿主体内に虫卵肉芽腫が形成されることによってヴ糞線虫に対する感染防御が誘導されることが示唆された。原虫感染としてPlasmodium chaboudi感染に対する影響を調べた。A/JマウスはP.chaboudiに対して遺伝的に易感染性で、通常は腹腔感染1週間でほぼ全例が高マラリア血症を呈して死亡する。しかしマンソン住血吸虫を感染させたA/JマウスではP.chaboudiを感染させた後も全く死亡例はなく、末梢血中のマラリア原虫もクリアランスされることがわかった。この効果も住血吸虫感染7週め以降に観察することができたことから、宿主体内での虫卵肉芽腫形成後後に発現すると考えられた。この効果の発現機構を明かにするために各種サイトカインのノックアウトマウスを用いて検討を継続中である。癌細胞の拒絶に及ぼす住血吸虫感染の影響を調べるために、CBF1マウスでのUV♀1腫瘍細胞の増殖と拒絶を検討した。この結果、マンソン住血吸虫感染マウスでは非感染マウスに比べてUV♀1細胞の増殖が有意に速く、住血吸虫感染が腫瘍免疫に制御的に働くことがわかった。この機序をキラーT細胞活性の面から比較検討することを試みている。
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