研究課題/領域番号 |
08457082
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
寄生虫学(含医用動物学)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
太田 伸生 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (10143611)
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研究分担者 |
伊藤 誠 愛知医科大学, 助教授 (90137117)
丸山 治彦 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (90229625)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | Schistosomiasis / Plasmodium chabaudi / Stronglyloides venezuelensis / サイトカイン / NO / Th1 / Th2 / 宿主-寄生虫相互作用 / 腫瘍細胞排除 |
研究概要 |
嬬虫感染が宿主免疫を撹乱して、宿主の生体防御機構に影響を及ぼすことを明らかにした。嬬虫感染は一般にTh2優位の応答を誘導するが、腫瘍細胞、移植片、ウイルス、細胞内寄生細菌・原虫などの排除にはTh1細胞が促進的な機能を担う。従って嬬虫をTh2誘導原として捉えるならば、それが生体防御の阻害因子として機能するかもしれない。 本研究では住血吸虫をTh2誘導原と想定して、宿主の生体防御反応への影響をマウスで調べた。その結果、住血吸虫感染はベネズエラ糞線虫の寄生をほぼ完全に阻止した。またPlasmodium chabaudiに対しては感染防御の確立を宿主にもたらした。住血吸虫感染は腫瘍細胞の排除に対する阻害効果を示したが、Leishmania majorに対する効果は認められなかった。これらの結果から以下の諸点が整理される。 (1) 住血吸虫は宿主免疫をTh2優位に変化させて嬬虫の排除を導くが、原虫感染を増悪させる現象は今回の研究も含めて観察されていない。 (2) マンソン住血吸虫感染はA/Jマウスでマラリアの感染と発病に阻止的に働いた。その際にはIFN-γの産生が亢進しており、Th1を賦活した可能性が高い。これは宿主応答の決定には宿主一寄生体相互作用の他に寄生体相互の作用も関与していることを示唆した。 (3) 住血吸虫感染によって腫瘍細胞の増殖が亢進したことから、住血吸虫感染が免疫監視機構を撹乱/失調させている可能性が考えられた。 様々な寄生体が同一宿主内で存在する条件では、複雑な宿主一寄生体相互作用が成立しており、それが宿主の生体防御能を決定している。嬬虫感染を宿主から除くと生体防御能に大きな質的変化が生じ、集団の疾病構造が変化することも生じうる。感染症が蔓延する地域で特定の蠕虫を撲滅すると、新たな感染症の流行を招くことも起こりうると思われた。今後の世界の感染症対策にはこの視点からの監視も必要である。
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