研究概要 |
前年度までに、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparum感染赤血球表層の突起構造knobのみが陽性に荷電していたことが明らかになった.この結果は、陽性荷電部が陰性に荷電する非感染赤血球並びに毛細血管内皮細胞への接近・接触し、その後に起こる接着を容易にすることを示唆する.本年度は、前年度の結果を踏まえて接着過程に加えて、浸入過程における荷電の役割を検討をした.また、artesunateとTNF-alfaインヒビターpentoxifylineとの併用トライアルをタイ国で行った. 1. P.falciparom感染赤血球は数個の非感染赤血球に接着してrosetteを形成する.赤血球表層の陰性荷電の担い手であるsialic acidの末端分子N-acetyl-neuramic acidが0.1mM-0.5mMで一度形成されたrosetteを壊さずにresette形成過程のみを約50%阻害した.この結果は前年度までに示した仮説“感染赤血球は陽性荷電により弄感染赤血球に接近・接触し、その後に起こるより強い結合を可能にする"を支持する. 2. 一般的に原虫型寄生虫が宿主細胞に侵入する過程における荷電の役割をAFMにより検討した.P.falciparom.Toxoplama gondii,Leishmania amazonensis,Trypamosoma craziの各侵入型細胞は宿主細胞との接触部位を有し、接着部に明確な陽性背電部位が認められた.一方、非侵入型であるEntamoeba histolyticaおよびE.disparでは特別な荷電は認められなかった.従って、陰性に荷電する宿主細胞への侵入過程において、接触部位の陽性背電が重要な働きをすることが明らかになった. 3. 抗マラリア剤artesunateとTNF-alfaインヒビターpentoxiflineとの併用効果をタイ国Mahidolで重症マラリア患者を対象に検討した.pentoxifyllineとの併用では、artesnute単独に比較して、明確な改善は認めらなかった.
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