研究概要 |
1. 原子間力顕微鏡(AFM)を用いて熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparum感染赤血球表層を観察した。その結果、表層の突起構造knobのみが陽性に荷電していたことが判明した.また、ウシ脳性バベイシア症を引き起こすBabesia bovisが感染した赤血球表層のknob様の突起構造物も陽性に荷電していた.以上の結果は感染赤血球が陰性に荷電する毛細血管内皮細胞や非感染赤血球に接着する際、knobの陽性荷電が重要な役割を果たすことを示す. 2. ポリアニオンのsuraminやheparinがC32細胞培養系において、P.falciparum感染赤血球のC32への接着を抑えた.ポリアニオン処理した感染赤血球のAFM観察は、この接着阻害がポリアニオンによるknobの陽性荷電中和の結果起こったことを示していた.又、感染赤血球は数個の非感染赤血球と接着してロゼットを形成するが、赤血球表層の陰性荷電の主因であるN-acetyi-neuramic acidはロゼット形成過程を阻害したが、形成されたロゼットは壊さなかった. 3. 1の結果を踏まえて、原虫型寄生虫が宿主細胞に侵入する過程における荷電の役割をAFMにより検討した.P.falciparam Toxoplasma gondii,Leishmania amazonensis,Trypanosoma cruziの各侵入型細胞は宿主細胞との接触部位を有し、接着部に明確な陽性荷電部位が認められた.一方、非侵入型であるEntamoeba histolyticaおよびE.disparでは特別な荷電は認められなかった.従って、陰性に荷電する宿主細胞への侵入過程において、接触部位の陽性荷電が重要な働きをすることが明らかになった. 4. 抗マラリア剤 artesunateと他薬剤との併用効果をタイ国 Mahidol大学で重症マラリア患者を対象に検討した.鉄キレート剤 defroxamineとの併用では、拮抗効果は認められず、またマラリアに起因する肝機能障害の回復にはartesunate単独投与よりも両薬剤併用の方が効果的であった.TNF-alfaインヒビターpentoxifyllineとの併用では、artesunate単独に比較して、明確な改善は認めらなかった.
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