研究概要 |
破傷風毒素(TT)およびジフテリア毒素(DT)をHPLCなどを用いて精製、精製毒素をジチオスレイトールによる還元、4M-2M尿素処理によって解離し、MonoQカラムを用いたFPLCなどにより単離精製した。各毒素のN末端側酵素活性フラグメントとC末端側細胞結合性フラグメントを1・エチル-3(3-L-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl(CDI)またはN-サクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネートを用いるなどして互いに置換えた複合体を作成した。各毒素を解離した後、混合したものを透析によって尿素除去、酸化させて得た再構成物をも作成した。これらの複合体の細胞毒性をVero細胞、PC12細胞を用いて、動物に対する毒作用をモルモットの皮内反応、致死毒性によって調べたところ、それぞれの毒素を解離後、混合し再構成したものは毒作用を示したが、他の複合体はほとんど毒性を示さなかった。DT酵素活性フラグメントAまたはDTを神経成長因子NGFとCDIを用いて結合した複合体中の活性を調べたところ、ラットのコリン作動性神経細胞に特異的に傷害作用を示し、複合体のDTフラグメントAは活性を保持していた。DTとTTをそれぞれ還元、尿素処理で解離した後、混合して得た再構成混合物は、Vero細胞に対する細胞毒性の増加を示したので、再構成物を精製、細胞毒性を定量的にとらえようとしている。神経分泌性PC12細胞に対して、それら複合体は細胞毒性を示さなかったので、ノルアドレナリン開口分泌を指標として、生理活性を調べる方向に研究を進めている。また動物レベルでは上述のできるだけnativeに作成した複合体を単利精製して、DTに抵抗性を示すラット、マウスおよびDT、TTに感受性を示すモルモットを用いて致死,神経毒性を調べ、毒素フラグメントに対する抗体によるそれら毒作用の中和を調べる方向に研究を進めている。
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