1.アルファウイルス・スーパーファミリーに属する動植物RNAウイルスのRNA複製機構における共通性と類似性を解析するための基礎的実験を行い、下記の結果を得た。 2.動物ウイルス材料として日本産アルファウイルスであるサギヤマウイルスを、植物ウイルス材料として日本産オオムギ斑葉モザイクウイルスとムギ類萎縮ウイルスを用いた。何れも遺伝子構造の詳細が不明なので、ウイルスを増殖精製後、抽出RNAからcDNAライブラリーを作成し、各50コ以上のランダム・クローンから自動シーケンサーで塩基配列を決定、RACE法で得られた末端配列と合わせて全塩基配列を決定した。その結果、(1)サギヤマウイルスは全長11698塩基で、他のアルファウイルスの中では豪州産ロスリバーウイルスおよびマレーシア産ゲッタウイルスと最も近縁で、サギヤマウイルスと類縁のアルファウイルスが環太平洋沿岸諸国に広く分布していることが明らかになった。(2)日本産ムギ類萎縮ウイルス(JT株)ではRNA1(7225塩基)およびRNA2(3574塩基)の全塩基配列を決定し既知のアメリカ株と比較した。両株間でポリメレース蛋白のホモロジィは78%しかなく、日本株はアメリカ株とは別系統であることが明らかになった。(3)日本産オオムギ斑葉モザイクウイルスのポリメレース領域と外被蛋白の塩基配列を既知のアメリカ産株と比較したところ、塩基配列およびアミノ酸配列レベルで98%のホモロジーが認められ、アメリカ株がウイルス感染種子として日本に入った可能性が示唆された。 3.現在、サギヤマウイルスおよびオオムギ斑葉モザイクウイルスのポリメレース蛋白と特異的に結合する宿主蛋白を酵母2ハイブリッドシステムを使って検索中である。また、サギヤマウイルスとムギ類萎縮ウイルスについては完全長cDNAクローンの構築を完成し、感染性試験を行っている。
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