アルファウイルス・スーパーファミリーに属する動物および植物RNAウイルスの複製機構の類似性を明らかにする目的で、日本産アルファウイルス・サギヤマウイルス(SAG)と日本産ムギ類萎縮ウイルス(SBWMV)のゲノムRNAに対する感染性cDNAクローンを構築した。 1.SAGに対する感染性cDNAクローンの構築と遺伝子解析.前年度に決定された全塩基配列をもとに、完全長cDNAをT7プロモーター下流にクローニングし、in vitro転写RNAの感染性を検定した。完全長cDNAクローンpSAG2由来のin vitro転写RNAはBHK21に感染性を示し、野生型ウイルスと同様のプラーク表現型が得られた。サギヤマウイルスの保存原液を限界希釈し、96穴プレートを用いてウイルス株のクローニングを行ったところ、プラーク表現型の異なるウイルスクローンが多数得られた。pSAG2を親株として小型プラーク形成株の遺伝子を比較したところ、膜糖蛋白E2遺伝子に変異があることが明らかとなった。 2.SBWMVに対する感染性cDNAクローンの構築と遺伝子解析.RNA1(7.2kb)とRNA2(3.6kb)の全長cDNAをそれぞれSP6プロモーター下流にクローニングした。RNA1cDNAクローン(pJS1)およびRNA2cDNAクローン(pJS2)のin vitro転写産物混合液をChenopodium.quinoa葉とコムギ葉に機械的に接種したところ、前者では接種葉に局部病斑を、後者では全身的にウイルスが感染した。in vitro mutagenesisにより作出した変異株の解析により、RNA2にコードされる2種類のキャプシド融合蛋白は感染には不必要であることが明らかになった。
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