研究課題/領域番号 |
08457093
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 篤 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40152699)
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研究分担者 |
田川 優子 東京大学, 医科学研究所, 教務職員 (40178538)
永井 美之 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20022874)
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キーワード | パラミクソウイルス / センダイウイルス / リバースジェネティクス / V蛋白質 / 病原性 |
研究概要 |
センダイウイルスを含めたパラミクソウイルスゲノムの90%は蛋白質をコードしており、ゲノム全体が無駄なく利用されている。一つの遺伝子は一種類の蛋白質だけをコードしているが、例外的に端から二番目のP遺伝子だけは複数の蛋白質をコードしている。その主要な蛋白質はRNA合成酵素の小サブユニットであるP蛋白質であり、その他に異なる蛋白質読み枠を利用してC蛋白質とパラミクソウイルス特有のRNA編集作業(鋳型に依存しないでG塩基を付加)により、P蛋白質の読み枠を途中で変更して新しいカルボキシル(C)末端を持ったV蛋白質が産生される。特にV蛋白質はすべてのパラミクソウイルスで認められ、しかもC末端のシステインに豊んだ領域は保存性が高い。しかしながら、C、V蛋白質供にその機能は不明で、解明手段もなかった。そこで今回、センダイウイルスのcDNAのRNA編集領域に二つの改変を加え、そこから変異ウイルスを回収し、その性状解析を行った。変異ウイルスと親ウイルスは同じ効率で回収され、回収ウイルスの該当部分には人工変異が保持されていた。変異ウイルスのmRNA及び蛋白質の解析から、このウイルスはV蛋白質産生能を欠いたV欠損ウイルスであることが確認された。このV欠損ウイルスは培養細胞レベルではRNAの転写・複製能の増進により、親ウイルスより増殖速度が早く、しかも細胞変成効果も高く、明瞭なプラックを形成し、その表現型はけっして親株に比べて弱毒化していることを示すものではなかった。しかし、マウス個体に接種すると、親株が増体率の減少、顕著な肺病変、高い肺内ウイルス量を示し、死に至らしめるのに対して、V欠損株では感染早期に肺内からウイルスが排除され、マウスが回復することが示され、V蛋白質は培養細胞レベルでは非必須な蛋白質であるが、個体レベルでは病原性発揮にとって必須な蛋白質であることが始めて明らかとなった。
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