我々はフレンドウイルス(FV)誘発腫瘍FBL-3に対する免疫応答を解析する過程で、CD8陽性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とヘルパー型T細胞(Th)クローンを樹立し、それぞれが認識するエピトープを決定した。従来、ウイルス感染を防御するためのワクチンとしては中和抗体かCTLを誘導する能力が高いという側面に力点が置かれていた。我々は、Thクローンの一株であるF5-5が認識するエピトープ(F-MuLVenv_<462-479>:合成ペプチドi)を合成しFVを感染させたところFV白血病の発症は完全に阻止された。この機序は不明であるが以下に示すようなThクローンの新たな機能を見いだした。上記エピトープの他にThクローンはF-MuLVenv_<122-141>:合成ペプチドfn)を認識する。2種のペプチドを認識するThクローンは増殖反応を指標に樹立されたものであり、FBL-3に直接の細胞傷害活性は示さなかった。ところが、これらのCD4陽性T細胞クローンはMHCクラスIIを発現する標的細胞に抗原ペプチドで感作するとペプチド特異的に細胞傷害性を示した。細胞傷害における抗原認識はペプチド特異的ではあるが、増殖刺激時の認識に比べ厳密ではないことが、アラニン置換ペプチドを用いて増殖反応と細胞傷害反応を比較した結果判明した。また細胞傷害の機序としてははパ-フォリン、CD95-CD95Lそれぞれを介するものと、両者を介するものの3種のタイプが存在した。パ-フォリン、CD95-CD95L二つの細胞傷害機序を示すThについては報告が無く、CD4陽性キラーの動員をねらったワクチンは特異性が厳密でないという点で有効かもしれない。
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