研究概要 |
1)神経病源性を持ったヒトインフルエンザウイルスはマウス脳において黒室神経細胞に特異的親和性をもっていることをウイルス感染マウス脳切片の解析から明かにした(J. Exp. Med. 181, 2161-2169. 1995).ウイルスの脳内増殖性を詳細に検討するため脳各部位を初代培養して、in vitroでウイルスを感染して各部位のどのような細胞にウイルスが親和性をもっているのかを検討した。マウス脳ではちいさすぎるので今回はラット脳細胞を用いた。18日胚のラットを取りだし、顕微鏡下でhippocampus, neocortex, cerebellum, substantia nigriaを分離して神経-グリア共存培養をおこなった。細胞をまいてから7日めにウイルスを感染させ12-72時間後に、感染細胞を固定してウイルス増殖細胞を抗ウイルス抗体で、神経細胞をMAP-2抗体で、アストロ細胞をGFAP抗体、ミクログリアをOX-42抗体、ドーパミン産生細胞をTH抗体で二重染色した。其の結果15-20%のnigral neuronはTHポジテブでそのうちの90%にウイルスが感染していた。substantia nigriaの80%以上の細胞にウイルス増殖がみとめられた。従って神経病源性インフルエンザウイルスは神経細胞、しかもドーパミン産生細胞に特異的親和性をもっていることがin vitro培養系において確認された。またウイルスのレセプターであるシアル酸分布をMAA, SNAで検討したところ、両者とも主にニューロンに見いだされており、とくにドーパミン産生細胞に多いということではなかった。 2)インフルエンザウイルスのレセプター認識を最近のHINIウイルスを用いて研究し、レセプター認識にはHA蛋白質以外遺伝子産物の寄与があることを明かにした。
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