研究概要 |
1)ウイルスの脳内増殖性を詳細に検討するため脳各部位を初代培養して、in vitroでウイルスを感染して各部位のどのような細胞にウイルスが親和性をもっているのかを検討した。マウス脳では小さすぎるので今回はラット脳細胞を用いた。18日胚のラットを取りだし、顕微鏡下でhippocampus,neocortex,cerebellum,substantia nigriaを分離して神経-グリア共存培養をおこなった。細胞をまいてから7日めにウイルスを感染させ12-72時間後に、感染細胞を固定してウイルス増殖細胞を抗ウイルス抗体で、神経細胞をMAP-2抗体で、アストロ細胞をGFAP抗体、ミクログリアをOX-42抗体、ドーパミン産生細胞をTH抗体で二重染色した。其の結果15-20%のnigral neuronはTHポジテブでそのうちの90%にウイルスが感染していた。substantia nigriaの80%以上の細胞にウイルス増殖がみとめられた。従って神経病源性インフルエンザウイルスは神経細胞、しかもドーパミン産生細胞に特異的親和性をもっていることがin vitro培養系において確認された。上述の研究ではウイルスを脳内接種したものであり、効率よく脳内感染をひきおこし、脳内ウイルス増殖部位の検討には適しているが、自然感染の現象とはことなるため、神経病原性ウイルスを経鼻接種して脳内ウイルス増殖を検討した。其の結果血行性に脳内にウイルスが侵入する際にはcatechoraminegic neuronsでウイルスが増殖することがわかった。 2)脳内でウイルスが増殖するにはレセプターのシアル酸が重要であることがわかった。最近分離されたウイルスではウイルスレセプターの認識に変化が生じているのでこのウイルスのレセプター特異性、またこのレセプター特異性がなにによって規定されるのかを明かにしようとし、さらにこれらレセプター特異性に変異をおこしたウイルスにおける神経病原性を検討することを試みた。このウイルスはHA遺伝子に変異がおこっていた。さらに、この変異は糖鎖に関係するアミノ酸ではなかったが、シアリダーゼ処理、やNA遺伝子の共発現によってレセプター特異性が変化することがわかった。さらにNA遺伝子の働きをM遺伝子がサポートする新しい共同作業があきらかになった。
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