デングウイルスに初感染後回復したドナーの末梢血Tリンパ球を用いフラビウイルス特異性を増殖反応によって検討した。6人のドナーのうち5人はデングウイルス抗原に対し対して増殖反応を示し、いずれもデングウイルス型交叉性の増殖反応であった。さらにデングウイルスに2度感染し、デング出血熱を発症した患者末梢血よりCD4陽性及びCD8陽性T細胞クローンを樹立し、型交叉性を調べると、すべてのクローンはデングウイルス型交叉性であった。以上よりデングウイルスに感染した場合、多くは型交叉性T細胞を含む反応を示すことが明らかとなった。さらに、デングウイルスに再感染した場合には、型交叉性反応T細胞の占める率が一層多くなることが示された。 さらにフラビウイルス間の交叉性反応を調べるため、日本脳炎ウイルスワクチンにより免疫された健常人末梢血リンパ球のデングウイルス及び西ナイルウイルスに対する反応性を調べた。日本脳炎のみに免疫された2人のドナーのリンパ球はいずれも日本脳炎ウイルスに対して強い反応性を示した。デングウイルス抗原や西ナイルウイルス抗原に対しても増殖反応を示したが、日本脳炎抗原に対する反応よりは低値であった。次に日本脳炎抗原を用いてCD4陽性T細胞クローンを樹立し、そのウイルス特異性を調べた。これらのT細胞はキラーT細胞活性を有するものが多く日本脳炎ウイルスのE蛋白を認識した。ウイルス特異性では、日本脳炎ウイルスのみに反応するものと、日本脳炎と西ナイルウイルスの両方に対して反応するものの2種が得られたがデングウイルスに対して反応はみられなかった。以上の結果よりフラビウイルス交叉性反応を示すT細胞は存在するが、その率はそれほど高くないことが示唆された。
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