環境中の化学物質の新しいリスクアセスメント方法として、1)ヒトが化学物質に曝露した際の標的臓器における濃度変化を、薬物動態モデルによって算出することにより、化学物質の毒性をより直接的に推定すること、2)ヒトの培養細胞に対して低濃度の化学物質を曝露させ、CATアッセイ等の分子生物学的手法を用いることにより、発癌そのものでなく、発癌遺伝子、発癌抑制遺伝子の発現など、発癌に伴う細胞の変化を捉えることによって、低濃度におけるヒトの発癌リスクを推定することの2つの方法を開発することにより、化学物質のリスクアセスメントをより厳密に評価することを目的として本研究は実行された。6つのコンパートメントをもつ薬物動態モデルは、ヒト体内の薬物動態および奏効部位における薬物濃度の推定に有用であり、未知の化学物質の毒性評価に利用できるものと思われた。また、CATアッセイは、細胞毒性や発癌機序に対して貴重な情報をもたらし、ヒトの細胞を用いている点で非常に有用な毒性評価法の1つと考えられた。今後、実験データをさらに入手し、モデルの信頼性を高めていく予定である。
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