酸化亜鉛(ZnO)フュームによる金属熱の発症機序を解明する目的で、ラット腹腔内浸出性好中球やマウスマクロファージ様細胞株Raw264.7などの貪食細胞を用いて、ZnOの活性化作用とその機序を検討した.ZnOは、グルタチオン(GSH)やチオール化合物の添加により活性化作用が増強されることがわかった。ZnO単独では、好中球やマクロファージの細胞膜のCR3受容体に認識され、GSHによりFcγRやその他の受容体を介して、GTP結合蛋白、カルモジュリン、プロテインキナーゼC、チロシンキナーゼ、細胞内カルシウムなどの細胞内情報伝達機構の関与のもとにNADPHオキシダーゼの活性化によりO_2さらにH_2O_2が増加することがわっかた。ZnOとZnO+GSH刺激による好中球活性化作用の違いを検討すると、ZnOは細胞膜のNADPHオキシダーゼ以外に細胞質の一酸化窒素合成酵素(NOS)からO_2産生を刺激しパーオキシナイトライト(ONOO)を発生させるのに対し、ZnO十GSHは、ミトコンドリアに局在するといわれるモノアミンオキシダーゼ(MAO)を活性化しH_2O_2の産生を増強している可能性が示唆された。このことは、核転写因子の活性化やアポトーシスの発生機序に関与する新しいH_2O_2の発生源としての可能性を有しているだけではなく、MAOと細胞内情報伝達機構の関係を繋ぐ新しい発見の可能性がある。さらに、Raw246.7を用いた実験から、GSHはZnO粒子の貪食作用を増強させることが認められた。本研究より、亜鉛熱は、ZnO粒子に内因性のGSHが作用することによって発症する可能性が示唆された。
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