研究概要 |
本年度では、職業性皮膚感作性物質の免疫毒性を重点におき、産業現場でよく見られている皮膚感作性物質であるホルムアルデヒドを被検物質として導入し、その免疫毒性をサイトカイン産生の面から評価した。具体的には、マウスをホルムアルデヒドで感作し、リンパ器官および炎症皮膚における種々なサイトカインの遺伝子発現を検討した結果、以下の成果が得られた。まず、17.5%ホルムアルデヒドをBa1b/Cマウスの腹部に一日おきに計3回塗布した。その後、異なる日にマウスの脾臓およびリンパ節における9種類のサイトカインmRNAをRT-PCR法で検索した。その結果、最終回の塗布を行った3日目に、感作マウスの脾臓とリンパ節では、そのIL-2,IL-4,IL-12p40,II-13,IL-15,IL-18,IFN-gammaのmRNA発現が対照群に比べ顕著に増加したことが分かった。しかし、IL-5とIL-10に関しては有意な増加は見られなかった。つぎ、同じく塗布後の3日目にマウスの耳介を2%ホルムアルデヒドでチャレンジャーし、耳介肥厚反応を惹起するかを検討した。誘発後の24時間後に、感作群では有意な耳介肥厚反応が認められた。また、皮膚におけるIL-2,IL-4,IL-5とIFN-gammaとのnRNAを定量したところ、IL-4とIFN-gammaのmRNA発現に関しては炎症皮膚は対照皮膚より有意に高かったが、IL-2とIL-5のmRNAに関してはその差は認められなかった。さらに、炎症皮膚におけるIL-4mRNAの発現量と耳介肥厚反応の間に有意な正の順位相関が見られた。また、IFN-gammaとIL-4mRNAの発現量と耳介肥厚反応の間にも同様な正の相関が見られた。以上の成績は、サイトカイン産生の検索が産業化学物質の免疫毒性を評価するための有用なパラメータであることを示唆する。
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