現在まで産業現場での事例、in vitro・in vivo実験結果によって蒸気による皮膚吸収があることが考えられているジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶剤はその使用量も多く、皮膚吸収寄与度に関する知見が不足していることからその寄与度評価を行った。 初年度はヒトボランティア曝露に用いる曝露チャンバーの作成、倫理委員会の承諾、DMACに関して曝露実験、一部の化学物質に関して曝露実験の可能性についての検討、を行った。曝露チャンバーは主・副曝露室からなり、半透明の素材で、内部の被曝露者の状態が把握できるように設計され、かつ曝露物質が吸着しにくい素材を選択した。エタノール、DMACで行った濃度コントロール実験では、チャンバー内濃度はどの位置でも均一で、その濃度の安定性も高く、ボランティアが曝露するに際しその安全性が充分保たれることを確認した。 その後、ヒトボランティアを対象としたDMAC(対象者12名)、DMF(対象者12名)の曝露実験を行ったが、DMACは皮膚吸収寄与程度は経気道吸収と比し41.6±10.7%(26.3〜59.8%)で、DMACの尿中代謝物である尿中NMACの半減期は経皮曝露7.7±1.7時間、経気道曝露5.2±2.7時間であった。DMFは皮膚吸収寄与程度は経気道吸収と比して42.5±15.5%(25.0〜74.0%)で、DMFの尿中代謝物である尿中NMFの半減期は経皮曝露4.3±1.2時間、3.1±1.0時間であった。 経皮吸収の高いと考えられるDMAC、DMFは保護マスクでは40%の皮膚吸収による曝露を防ぐことはできない。今後このような経皮吸収の高いと考えられる有機溶剤を初めとする化学物質の経皮吸収寄与程度の検討と、その結果から作業者への曝露低減が望まれる。
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