研究概要 |
今年度、38名のHIV-1感染者を対象にフォローアップを実施した。全体のウイルス分離率は79%であったが、分離された例(n=52)でのCD4陽性細胞数(CD4+値)の平均値は174であったのに対して、分離されなかった例(n=14)では396であり、分離率と病態とに間に関連が見られた。また増殖速度が早まり、分離されたウイルスがMT-4細胞へ感染性を持つ悪性化ウイルスが出現していると思われる例(n=14)のCD4+値は平均67であり、感染性陰性例(n=37)のそれは185と、病態が進行するにしたがって悪性化ウイルスの出現が認められた。実際に、悪性化ウイルスを検出され、発症の6か月以前に予測が可能であった例が1例見られた。これらのことからウイルス分離による悪性化ウイルスの検出はエイズ発症の予測マーカーとして有用であることが確認された。 血中HIV-1RNAコピー数と病態およびCD4+値との関連性を検討したところ、それらの関連は明確ではなかったが、抗HIV剤投与による影響が鋭敏に反映されており、薬剤投与の効果判定にRNAコピー数測定が有用であることが示された。下に種々の臨床マーカーが治療に役立った代表的な例を述べる。 この感染者は、3カ月の間にRNAコピー数は7,500から168,000/mLに急上昇し、ウイルス分離により悪性化ウイルスも検出され、CD4+値も急減し、発症の危険性が高まったと判断された。AZTおよび3TC投与治療を開始したところ、RNAコピー数は3,500にまで激減し、CD4+値も回復した。しかし遺伝子解析により、3TCに耐性を獲得していることが判明し、RNAコピー数も徐々に上昇を見せたが、薬剤をd4Tおよびインディナビル(プロテアーゼ阻害剤)に変えたところ再びRNAコピー数は激減しCD4+値もやや回復した。
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