研究概要 |
虚血性心疾患、本態性高血圧、糖尿病などの成人病は、遺伝素因保有者が長期間、ある環境要因に暴露することで主に中年期以降に発症する、いわゆる多因子病と考えられている。これまで環境要因がかなり具体的に把握されている反面、遺伝要因の検出が困難であった。分子遺伝学的手法の発展により最近になって原因遺伝子の検出が可能になりつつある。原因遺伝子同定後に,その知見を実際の発症予防に応用するには,ライフスタイル、遺伝素因も考慮したコホート集団が必須である. 成人病発症を研究するために,その発症年令から考えて職域集団が適切である.我々は日本電信電話北海道支社員およびグループ社員で平成6年度定期健康診断を受診した,約12,000名を対象とした.虚血性心疾患の予知に関するコホート研究を開始するにあたって、同疾患の危険要因である5項目,すなわち喫煙、肥満、高血圧、耐糖能異常、高脂血症の保有率を性別に調査した。危険要因の判定基準は,喫煙は現在喫煙,肥満は標準体重比110以上,高血圧は収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上,耐糖能異常は空腹時血糖110mg/dl以上,高脂血症は血中コレステロール220mg/dl以上とした. 受診記録票から性・年齢別に集計し,上記5つの危険要因について保有率を算出した対象者の平均年齢は男42.5歳,女43.2歳であった.40歳以上の人数は,男6,587名,女2,174名であった.男性で保有率が高かった危険要因は喫煙,高脂血症,肥満でそれぞれ約60%,30%,25%であった.女性では高脂血症,喫煙,高血圧の順で保有率が高くそれぞれ30%,25%,15%であった.
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