研究概要 |
本年度は胎児期のメチル水銀曝露の投与量の決定および,伝達物質を指標とした神経化学的影響の検索を行なった.妊娠期中〜末期にメチル水銀を5段階(0.03〜3mgHg/kg/day)の用量で10日間経口投与し,仔への影響を調べた.その結果,3mgHg/kg/day投与群(Hg3と略,以下同様)では子は出生後間もなく全て喰殺,Hgl群では出生4日目までに10%の仔が喰殺されたが,以降は正常に成育,Hg0.1および0.03群では,脳重量などを含めても離乳まで明らかな影響を認めなかった.以上より,長期微量曝露の影響を検索するための投与量としては,Hg0.3およびHg1群を選ぶことが妥当であると思われた.これらの投与群を対象として,線条体からの脳微小透析を実施中である.一方,神経学的影響の検索のための予備的検討として,妊娠中期にMeHg投与(総投与量として,5, 9mgHg/kg)した動物を離乳時に解剖し,脳内部位(大脳皮質・小脳・線条体別モノアミン代謝への影響を調べた.その結果,小脳においてノルエピネフリン(NE)含量の低下を認めたが,代謝産物との比では大きな変化は認められず,NEの低下は代謝回転の促進によるものではないことが示唆された.大脳でも有意ではないものの同様の傾向を認めた.ドバミン系の代謝ではいずれの部位でも変化を認めなかった.以上より,胎生期曝露におけるモノアミン系への影響には部位差があり,小脳・大脳への影響が強いことが示唆された.なお,バ-ジリン投与を用い,モノアミンの代謝回転をより直接的に評価する方条件検討を行なった.
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