研究概要 |
Cholecystokinin(CCK)は8アミノ酸からなるペプチドホルモンで、prepro CCKがendopeptidaseによりプロセッシングを受け生成されたものである。 CCKは主として消化管(小腸,胆嚢)のほか、中枢および末梢の神経系に存在する。消化管においては膵酵素の放出や胆嚢の収縮に関与し、中枢神経系においては不安や食欲の機能に重要な役割を演じる一方、ドーパミンと相互作用する。我々は一般集団を対象にprepro CCK promoter gene領域の解析を行った結果、Splが結合するcis-elemintの変異型とCloningerの人格類型のHarm avoidance(HA)の低得点グループとが相関することを示唆するデータを得ている。またHAはタイプ2のアルコール依存とも相関することが報告されていることもあり、本研究ではこの変異型をマーカーとしてアルコール依存症に関する対照研究を行った。 あらかじめ検査の目的を説明し、同意の得てある男性アルコール症患者80人および健常人男性100名の末梢血からDNAを抽出した。PCR法によりCCKのpromoter領域225bpを増幅し、SSCP法により変異型のスクリーニングを行った。変異型を示したものは、PCR-direct sequencing法により塩基置換部位を確認した。更にallele specific primer PCR(ASP-PCR)法によって再確認した。 promoter領域内のcis-element GGGCGGはtrans-acting factor Splの結合部位であるが、このCがTに塩基置換している変異が、ヘテロあるいはホモ接合型で多型として検出された。C/Tの置換を検出しうるprimerを作り、ASP-PCR法で両集団をスクリーニングした結果、一般集団ではCC型63%,CT型34%,TT型3%であったのに対し、アルコール依存症群ではCC型27%,CT型48%,TT型25%で、両群の間で表現型および遺伝子頻度ともに有意差が検出された(p<0.01)。また一般集団を対象にTPQテストとCCK gene のC/T多型との相関を調べたところ、HA低得点グループとCCK-T型との相関を示唆するデータが得られた。
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