研究概要 |
昨年我々はCCK gene promoter領域のSp1 binding cis-element(GGGCGG)にC→Tの塩基置換を見い出し、この多型とアルコール依存症が関連することを報告した。今年度はアルコール離脱症状のうち個体差が顕著な振戦譫妄、幻覚、痙攣発作の症状とCCK geneの遺伝子型との対照研究を行った。更に、健常人集団を対象にCCK geneの遺伝子型と抹消血中のCCK peptideの濃度の関連性を調べた。 あらかじめ研究の目的を説明し同意を得たアルコール依存症の男性174名と一般健常人195名を対象とした。多数検体の分析を正確かつ容易にするため、SSCP-AnakysisはDNA Sequencer(ALF express,Pharmacia)を用い、10% native PA gel,0.5×TBEにて一本鎖DNAを電気泳動により分画した後、Fragment Maneger にて解析した。CCK gene遺伝子型における血中CCK濃度を調べるため、健常人(男性:CC型12名、CT型11名、TT型3名、女性:CC型5名、CT型14名、TT型7名)に対し、食後30分に静脈採血した。全血1mlに対し1.2mg EDTA-Na2および500KIUのトラジロールを含む試験管に移し、直ちに遠心して血漿を分離し、検査まで-20℃に凍結保存した。CCKペプチドと特異的に反応する抗体を用いてradioimmunoassayにより0.2ml血漿中の濃度を測定した。 アルコール離脱症状を示した患者のうち振戦譫妄ではCC:36.5%,CT:59.6%,TT:3.9%となり、一般健常人のCC:33.8%,CT38.0%,TT:8.2%と比較しT遺伝子をもつ固体が有意に高い頻度を示した(x^2=4.91,p<0.03)。CC型とCT,CT型とで抹消血中CCK peptide濃度を測定した結果、男性群ではCC型(19.9±6.9),CT型(11.1±5.5),TT型(9.1±9.7)となり、女性群ではCC型(16.1±12.1),CT型(15.1±13.3),TT型(14.6±8.0)となり、男性群ではCC型はCT,TT型より有意に高い値を示した。(p<0.001)。アルコールの長期乱用により発症する離脱症状には個人差が存在することが、従来知られてきたが、その遺伝的背景のひとつとしてCCK geneのpromoter領域の多型が関与することが推測される。アルコール離脱症状を類型別にみた場合、振戦譫妄はCCK geneのC-45Tの多型のうち、T型変異を含む遺伝子型がhigh riskの候補のひとつとなることが示唆された。またこの生理的背景にはCCK peptideの産生量が遺伝子型と関連している可能性もある。
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