研究概要 |
血管内皮は、IL-1やTNF-αなどのサイトカインや変性LDLなどさまざまの刺激によりE-selectin,ICAM-1,VCAM-1などの接着分子を発現し、白血球等との接着を生じる。これは、炎症のみならず動脈硬化の初期にもみられることがわかっている。SLEや強皮症などの総合組織疾患では、可溶性のE-selectin,ICAM-1,VCAM-1が増加し、動脈硬化ではICAM-1が増加しているといわれている。振動障害では、末梢循環障害がみられ、手指の血管の内皮の障害が考えられている。そのため、今回振動障害の末梢循環障害の接着因子との関連を調べた。 振動障害患者25名と非振動工具使用者24名について、血清中の接着分子E-selectin,VCAM-1を測定した。対象者はすべて男性であった。年齢は60代70代であった。接着分子の測定はELISA法(サンドイッチ法)で行った。E-selectinは両群に差はなかった。VCAM-1では、振動障害患者の値が有意に高かった。さらに、ICAM-1についても測定した。ICAM-1では、振動障害患者と非振動工具使用者の間に有意の差はなかった。 次にレイノ-現象との関連を調べた。振動障害患者でのレイノ-現象の程度とE-selectin,ICAM-1,VCAM-1との有意の関連はみられなかった。振動障害患者で、IL-1やTNF-αのようなサイトカインによって、血管内皮に発現が増加する接着因子VCAM-1が有意に高いことがわかった。
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